空間工房　金井建築アトリエ　作品集（住宅）　「今熊野の家Ⅸ」


	■設計覚え書
	九つ目の今熊野の家。仲の良い姉妹お二人の住まいです。今熊野近辺に八つの住宅を設計したのが機縁となって、設計を依頼されました。今熊野は道が狭くて、入り組んだ土地柄です。案の定、前面道路幅は２ｍ弱、あまりの道の狭さと厳しい予算に４社が辞退する始末。しかし、「捨てる神あれば拾う神あり」で無事、完成致しました。引き受けてくれた工務店には大感謝です。設計者の自邸(今熊野の家Ⅲ) は敷地条件上、中国のヤオトン建築のように、地下から空の景色のみを楽しむ造りになっていますが、遠くを見渡すことが出来る【望楼】への思いはいつも心の隅に潜んでいて、京の３閣、４閣と称されている建物は、究極の憧れです。今熊野の家Ⅸの計画敷地は家屋密集地とはいえ、幸いなことに３階の高さからは、将来も妨げられることなく、北山から東山、南は伏見の方まで見通すことが出来る、今熊野にしては有難い敷地です。夏の風物詩、送り火も拝めます。迷うことなく、３階に主空間を設定致しました。１階、２階は３階を生かす為にある、日常生活に必要な空間です。外観は京都の景観条例による和風仕立てで、簡素だが洗練されたデザインにまとめました。というわけで、【望楼の家】と名付けさせて頂きました。